ADAPTER。、最新アルバムについてのインタヴューが到着!
メトロノームのギタリストである福助。が、ADAPTER。として活動を始めて今年で15周年を迎えた。彼は、”15周年”を祝うようにアルバムを制作。それが、9月9日に通販/配信(shop MECANOでのみ店頭販売)リリースの「虹始見。」(にじはじめてあらわる) になる。
全15曲収録にしたのは、15周年に掛けて。内容も、12曲の新作に加え、すでに音源として入手不可能な曲たちの中から、今もライブで好んで演奏している「また咲き誇る頃に」「残念な子」「ご自由にどうぞ」の新録を収録。さらに、「四季並べ」にゲストベーシストとして中野テルヲ、ゲストコーラスにRickyを呼び入れれば、「僕と君の幸せ」にはアイノリ・テクノーズ(福助。とSharaku Kobayashiの小林写楽、Cosmo-Shikiの清水良行、 ピノキヲのうゆにによるアイドルユニット)もコーラスで参加している。
本作の特徴が、”福助。らしさ”を遺憾なく発揮していること。彼自身の音楽的な影響も、曲の中へ多分に発揮。「肩肘張らず。でも、手を抜かず」と本人も語るように、「着飾らないけど最新型」なADAPTER。SOUNDがアルバムに溢れている。 15周年だから15年間の歩みを…ではなく、今、最も自分らしいリアルな姿を提示してゆくところが福助。らしさ。別の捉え方をするなら、15年間の蓄積が、今の最新モードを生み出しているということ。この作品について、福助。がたっぷりと語ってくれた。
肩肘張らず、手を抜かずの福助。らしさを投影した、ADAPTER。の15周年アルバム「虹始見。」が完成!!
――ADAPTER。も、今年で活動15周年を迎えるんですね。
福助。 そうなんです、何時の間にやら…。
――その15周年に合わせて制作したのが、アルバム「虹始見。」になります。聞いてて感じたのが、良い意味で肩肘張らない福助。さんの姿が見えてくる作品ということでした。
福助。 肩の力は抜けていましたね。もちろん、手は抜いてないですけど(笑)。
――福助。さんの歌詞を読んだ人たちの多くが「天の邪鬼な性格だね」と言います。でも福助。さん自身は、わざとシニカルな視点で書いているのではなく、真っ直ぐ純粋な気持ちで歌詞を書いている。それが、たまたま人とは異なる視点だから「天の邪鬼」に思われてしまう。自分は、そう捉えているのですが…。
福助。 まぁ、そうですね。歌詞に書いていることは、自分でも間違ってないと思って書いていますから。ただ、まともな人間ではないと自分でも思っているように、人とは視点が異なっているんでしょうね。歌詞を書くに際しても、何時だって「自分の素直な気持ち」を書けば、それが一番自分らしい言葉としても反映されますし、そのほうが聴く側にも素直に伝わりやすいですからね。
――肩肘張らず、素直に想いを投影するスタイルは、歌詞とサウンドの両面に反映していることじゃないですか?好きなアーティストからの影響も、曲によっては見えますからね。
福助。 そこも、いい感じで力が抜けているからだと思います。いまさら、好きな物事を隠す必要もない。誰もが、何かしら好きな音楽に出会い、それを聞いて育ってきたわけじゃないですか。その音楽が心の中から消えることがなければ、その影響も自然に作る楽曲へ反映もしてゆく。要は、それを隠すのではなく、どう自分の色として組み込んでいくかの問題。いくらその人をリスペクトしていても、けっしてその人にはなれないし、ならない。そんなことは、長く音楽に携わっていると重々わかっていること。それをどう、自分の中で好きに消化していくか…ということなので。
――「四季並べ」には、ゲストベーシストとして元P-MODELの中野テルヲさんが参加。まさに、福助。さんのリスペクト心を刺激する方が弾いています。
福助。 ずっと尊敬していた方に今回参加していただきました。誘い方はけっして軽くはなかったんですけど、軽い気持ちで「中野さん参加してくれないかな」と思い立ち、声をかけたところ、こころよくOKしてくださいました。自分がリスペクトしてきた方が参加してくれたことが、なんと心強かったことか。
実際に中野さんのベース演奏が加わったことで、もともとあった楽曲が大きく生まれ変わりましたからね。中野さんのベースは独特なメロディーを奏でれば、独特な間の取り方をしてゆく。そういう自分にはないエッセンスを加えてくださったことで、予想以上に良い楽曲に仕上がりました。
――「四季並べ」には、ゲストコーラスでRickyさんも参加しています。
福助。 Rickyさんに声をかけたところ「何をやればいいの?」と、彼もこころよく参加の返事をくださいました。今回は「四季並べ」のコーラスとしてお願いをしたわけですが、僕の歌声より小さくして入れてるにも関わらず、それでも際立って聞こえるように、さすがRickyさんですよね。
――「僕と君の幸せ」にも、アイノリ・テクノーズの方々が参加しています。
福助。 アイノリ・テクノーズというユニットは、僕、(小林)写楽・Cosmo-Shikiの清水良行、 ピノキヲのうゆにと、ソロユニットをやっているメンバーが集まり、昨年より始めたアイドルユニット。せっかくなので参加してもらいました。
――一部ゲスト参加もありますが、基本は福助。さんの手により完全構築した作品としてアルバム「虹始見。」は仕上げています。
福助。 じつは、一瞬「15周年に掛けて15曲収録するんだから、ゲストも15人呼んだら面白そう」という考えが頭をよぎったんですけど、「15人も友達いないな」と思って(笑)。
――そんなことはないですよね。
福助。 もちろん、いろんな方々との繋がりはありますけど(笑)。僕はギタリストのように、友達もギタリストが多い。でも、ADAPTER。は僕一人ですべての楽曲を構築しているユニットだから、彼らに参加を呼びかけても、どの曲にも新たなギターを入れるヶ所がないんですね。だったら無理にゲストを入れることなく、全部自分で構築することにしたわけなんです。
聞いた人の捉えた答えが、その人の正解になる。
――アルバム「虹始見。」には、「また咲き誇る頃に」「残念な子」「ご自由にどうぞ」と、過去に発表した楽曲のリ・レコーディング曲も収録しています。
福助。 最初はすべて新曲で構築しようと思ったんですけど。今でもライブ演奏しながらも、会場限定盤などの理由から、もう手に入らなくなっている曲たちもADAPTER。にはいろいろあります。そういう曲たちも、今のADAPTER。としてリ・アレンジし聞いてもらいたいなと思い、そうしました。
――アルバムの販売時期を考えると、制作はコロナ禍の時期にも重なっていたのかなと想像します。楽曲によっては、その時期の心境を歌詞に反映していません?
福助。 主にコロナ禍の時期に曲制作をしていたように、その時期の心境を反映した曲もありますね。ただし、以前からADAPTER。には病気やウィルスの脅威などを書いた歌たちもあるように、なんでもかんでもコロナに関連しているわけではないです。ただ、聞いてくださる方がそう思ったのなら、それが正解。そこは、自由に捉えていただけたらなと思います。
――本作は「ADAPTER。15周年」を祝しての制作になりますが、収録した曲たちには「15年間の歩み」を反映したわけではなく、どれも「今の時代の中で感じる想いや表現したい音楽性」を形にしていますよね。
福助。 昔と同じようなことをやっても、それはそれで良いのかも知れませんけど。やはり、今やりたいことを表現してこそじゃないですか。そのうえで毎回心がけているのが、「ライブ演奏する際にどうするか」「ライブでこういうパフォーマンスをするから、アレンジはこうしよう」など、どの曲もライブで演奏することを前提にしていること。やはり、そこは欠かせないですよね。
もちろん、音源だからこそのアレンジとしてアルバムには収録していますけど。すでにライブ配信を通して演奏したいくつかの新曲たちは、アルバムとはアレンジを変えて披露しましたからね。9月9日にアルバム「虹始見。」の発売記念ライブを無料配信で行うのですが、そのときに、またどういう形にリ・アレンジして届けるのかも、すでに楽しみにしていることですから。
――ADAPTER。の場合、基本は打ち込んだトラックを流す形じゃないですか。とはいえ、けっしてアルバム音源の再現をやっているわけではないですよね。
福助。 もちろんです。どの曲も、その場で鳴らしている楽器があれば、そのときのライブの雰囲気に合わせフレーズを作っています。作品に収録した楽曲をライブ用に書き出すときも、音源の抜き差しをしながら、新たな音源をそこへ加えてもいくように、CDと同じ音源をライブで流すことは一切ないです。むしろ、ライブという場でどんなフレーズが生まれるかなど、ライブという場で新たに生まれる音楽を僕は毎回楽しんでいます。
その視点が天の邪鬼?!
――ADAPTER。の楽曲へ強く惹かれる要素の一つに、福助。さんの書く歌詞があります。人との想いのやり取りを記した歌を聞いてても、何時も真正面ではなく、いろんな角度から、予想を嬉しく越えた視点での想いを伝えてゆく。だから、その視点に心惹かれてしまうんでしょうね。
福助。 自分の場合、何処かしら斜めの方向から人の心や物事を見ていることが多い。変に頑固だし、自分の思っていることが正しいとも考えている。だからと言って、自分の意識や考えをまわりへ強要しようとは思ってない。まわりの人たちが思っている意識や考え方を否定もしなければ、それで良いなとも思っています。そのうえで、「自分はこう思ってる」という意識を曲げないだけ。それに対して、「人とは違う方向から見ているね」と感じたり、それを言葉にして伝えてくる人がいるんだという風に僕自身は捉えています。
――意識的に違う角度から見ているわけではなく、当たり前に見たり捉えている視点が、たまたま人とは異なっていたということですよね。
福助。 そうです。けっして、他の人とは違う風にしたいとは思ってないし、自分の意見や意志を強要し、他人様に迷惑をかけることもしたくない。むしろ、いろんな人たちと意識を共有し馴染んでいきたいのですが、どうしても人とは違う角度で物事を捉えてゆくことが多いみたいですね(笑)。
それぞれの季節と心が寄り添いながら描き出す物語や心象風景の数々。
――アルバムへ記した「虹始見。」というタイトル。この言葉の意味も、とても気になります。
福助。 昔の中国では1年に渡る季節を24個に分け、その1個をさらに3つに分け、それぞれに季節を現す言葉を記しています。「虹始見(にじはじめてあらわる)」も、季節を現す言葉の一つであり、「雨が上がった後に虹が初めて現れ出る時期」のことを指しています。僕は、その時期が一番好きなんですね。そこから、このタイトルを持ってきました。
昔の中国の人たちが、これほど季節にいっぱい名前を付けたのも、それぞれの季節の中でいろんな出来事が起きれば、1年という季節が濃いからこそだと思うんです。その1年間という濃密さを詰め込めたらという想いも持って、このアルバムを作りました。
――もしや、収録した曲たちも…。
福助。 「虹始見。」に収録した15曲は、どれも1年間の季節を現す歌になっています。それを順にではなくバラバラに並べました。どの歌も季節を舞台にしていますけど、季語が入っているとは限らない。恋愛系の歌詞でも、その情景を思い浮かべたときに見えてくる季節をそこに重ねて表現するなど、「こういうことが起きるのも、この季節だから」というように、その感情が生まれる季節として記した歌もあります。そういう風に聞いていただけたら、楽曲の捉え方も変わっていくんじゃないかと思います。
――季語は入っていなくとも、どの楽曲も季節と心模様がリンクしているわけだ。
福助。 そうです。もちろん、季節をわかりやすく投影した歌も入っています。「また咲き誇る頃に」や「みちしるべ」は、桜の季節をイメージして書きました。他にも「記憶桜」など、僕自身が春という季節が好きなので、自然と桜の時期をイメージした歌が多くなるんだと思います。「四季並べ」には四つの季語を入れ、より季節感が伝わるようにも書いていますしね。
――季節も意識して聴くことで、一つ一つの楽曲へ、より情緒や深みを感じるなと思いました。
福助。 だとしたら嬉しいですね。聞いた人たちが、記された歌詞を通し、自分の思い出の中の風景と照らし合わせては、「こういう経験、秋にあったなぁ」など、そういう風に想いを馳せてくれても嬉しいこと。そうやって自分の思い出とリンクしてもらえたら、より一層感情移入しながら曲たちを聞けると思います。
――人と人との関係性と季節を組み合わせ描いているところまでしっかり捉えて聞いていただけたら、より収録した曲たちを楽しめそうですね。
福助。 そうなんですよ。日本という四季の移り変わりを感じれる国に生まれた以上は、そういうところも感じながら。そのうえで、それぞれの思い出も重ねて聞いてもらえたらなと思います。
――福助。さんが、とくに「これを聞いて欲しい」という曲があれば、それも教えてください。
福助。 アルバムの冒頭を飾った「大義乃唄」は、自分が一番好きな曲。だからこそ1曲目に持ってくれば、この曲を聞いて気合いが入ることで、その後を聴く楽しみも増していく。今回のアルバムは全部で15曲入り。曲数が多いと、人によっては途中でだらけてしまう場合もあれば、印象の薄くなってしまう曲が出てしまう可能性もある。だからこそ、アルバムの最初と最後は気持ちをグッと引き締める曲にしたくて、「大義乃唄」と「四季並べ」を持ってきたわけなんです。
「沈黙の中の君」は、ちょっとゆっくりとした静かな曲ですけど。この手の楽曲は今までADAPTER。にはなかったから、曲の雰囲気的に気に入ってます。「僕と君の世界で」に記した歌詞もすごく温かくなるような世界観のように、これも好きですね。
自分の体験や思い出と重ね合わせ、四季の心模様の変化を楽しんでいただけたら。
――完成したアルバム「虹始見。」、福助。さんにとってどんな作品として仕上がりましたか。
福助。 ぜひ、自分に当てはめて聞いてもらえたらなと思える作品です。それに、聞いた人それぞれの感じ方次第で、曲に込めた四季の捉え方も変わっていくと思います。CD盤としては、一つの流れを作りあげていますけど。配信を通して手にしていただく方の場合、自分なりに四季を並べ替えて聞いてもらえたら…。そうやってこの作品を通し、四季の心模様を楽しんでいただけたらなと思います。
加えて今は、9月9日に行う配信ライブで、この曲たちをどう届けるか。その日のために使いたい機材も買い揃えたように、すごく楽しみにしています。
――今回のアーティスト写真も、かなりインパクトがあります。
福助。 この観音像は、大船駅の山の上にそびえ立っています。そこにはでっかい上半身の姿のみが見えるんですけど。大地に下半身が埋まっているという都市伝説も囁かれています。
僕が育ったのが、その観音像のある大船。そこから、あらためて地元愛を感じようと大船の観音像のもとで撮影をしました。「虹始見。」というアルバムは、「地元愛」「機材愛」「楽曲へ注いだ愛」「自分にも愛を注いで」作りあげました。自分に愛を降り注ぐと、自然と「人にも愛を注いでいける」ようになる。そういう想いを持って作りあげたのが「虹始見。」というアルバムであり、それが、ADAPTER。15周年のコンセプトにも繋がったこと。結果、最終的に辿り着いたのが「愛」だった。なので、たくさんの愛をふんだんに詰め込んだアルバムをみなさんも聞いて、ぜひ愛を感じてください。
TEXT:長澤智典
★インフォメーション★
●音源情報●
タイトル: 虹始見。
品番:APCRD-2003G
価格:¥3,500+税
発売日:2020年9月9日
■収録曲
収録曲:
01_大義乃唄
02_残念な子
03_また咲き誇る頃に
04_みちしるべ
05_記憶桜
06_合縁奇縁
07_ご自由にどうぞ
08_超越論的主観性
09_沈黙の中の君
10_凸凹へちゃむくれ
11_奇しき運命
12_好事家な君
13_僕と君の世界で
14_僕と君の幸せ
15_四季並べ
★LIVE情報★
日程 2020年9月9日(水)
配信元 ツイキャス
配信アカウント ART POP ENTERTAINMENT
https://twitcasting.tv/c:artpop_event
開演 19:00
料金 無料
ART POP ENTERTAINMENT:045-650-2155(平日12:00〜19:00)
info@artpop.org
9/09に活動開始15周年を記念した最新フルアルバム「 虹始見。」リリースするADAPTER。
発売記念LIVEの無料配信が決定!SPACE ODDの巨大LEDを背景に、映像と融和したスペシャルな
ライブをお届けします。
*本LIVEは再編集の上、DVDにて発売予定です。
詳細はADAPER。オフィシャルサイトにて近日発表いたします。