ダウト『ダウト自作自演!特別単独公演!』ライブレポート
ダウト『ダウト自作自演!特別単独公演!「超!幸の恩返し’21-幸樹生誕祭-」』TSUTAYA O-EAST
いずれ必ず終わりはくるからこそ、1分でも1秒でも長くダウトでいられるために未来を掴みにいく
ダウトが10月21日にTSUTAYA O-EASTでワンマンライヴ『ダウト自作自演!特別単独公演!「超!幸の恩返し’21-幸樹生誕祭-」』を行なった。ヴォーカル・幸樹の生誕祭ではあるがタイトルが指し示すように、この日のメンバーの願いは、応援してくれているファンへの“恩返し”。
「自分が一番大事な日に、大事なメンバーと、大事な君たちと、一番好きなライヴをするのが僕の幸せです。今日は存分にダウトのライヴを堪能して帰って下さい!」――幸樹
昨年は、全員が幸樹の衣装を着用。髪型など細部にまでこだわり、本人になりきる遊び心を発揮していたが、今年は久々のTSUTAYA O-EASTでのワンマンということもあり、企画性以上に、新旧の楽曲を織り交ぜた“ライヴの醍醐味”を全面に押し出した構成で届けられた。
ステージに登場したメンバーが定位置につくと、ほぼ演出要素のないフラットな照明のもと、サックスプレイヤーのYUCCO MILLERとのコラボ曲「赤春の林檎」が届けられた。メンバーが音を奏で、オーディエンスに届ける。そんな混じりっ気のないステージングに胸が熱くなる。青年期特有の“青春”は、大人になっても情熱を燃やし続けることで“赤春”として自身を動かすことが出来る。そんな楽曲を、ライヴの幕開けにもってくる心意気にも、現在進行形で夢を追い続けるバンドであることを再確認させられた。
バンドの代表曲の1つである「感電18号」、初期のナンバー「サテライトTV」、オーディエンスが曲にあわせ一斉にジャンプで応える「SUNRISE」と明るく勢いのある楽曲を立て続けに披露した後、ライヴの空気は一転。バラード曲「輝夜に満ちて勿忘草」では、演奏陣の音が降り注ぐように奏でられ、幸樹が手にした羽衣のような扇子が幻想的な世界を描き出した。
次に演奏された「生にしがみつく」で、さらに心の深い世界に触れる。真っ暗に落とされた照明の中、温かみのあるオレンジのライトが1点を照らし、そのなかに何かを求めるように上空に手を伸ばす幸樹の姿が浮かぶ。不器用ながらも愛に溢れたこの世界を必死に生きようとするひたむきさ、命の重さを全身で歌いあげる。後半、曲間で無音になったステージに幸樹のアカペラが響き、その直後、楽器陣の音が一気に迫りくる。まさに歴史を重ねてきたバンドならではの息を呑むような圧倒的なステージング見せた。
ライヴの中盤は、ドラムとベースがアップテンポなリズムを刻み、お祭りのお囃子を彷彿とさせる「狂喜乱舞」、久々の披露となった「富と名声」「官能ロボット」、幸樹が三味線を手にしたダウトらしさ全開の「歌舞伎デスコ」、そして、まだ音源化されていない新曲「一世風靡ファクト」など、華やかさと激しさを兼ね備えた曲たちが次々と演奏された。その間、冒頭の「赤春の林檎」とは一転、ステージ上は色とりどりのレーザーや、上下するLEDライト、さらにバンド名のロゴが電飾で輝くなど、まばゆい光で覆われた。ツアーファイナルを思わせるかのような派手な演出に、メンバーもMCで「ちょっとやり過ぎた(笑)」と話していたが、セーブすることを知らない無謀さも彼らの魅力の1つだ。メンバーの意気込みに呼応するように、曲にあわせ扇子を振り、ヘドバンや折りたたみなど全身でライヴを楽しむオーディエンス。
そのまま本編を駆け抜けるかと思いきや、次の曲「卍」でバースデイライヴならではのサプライズがおこる。ダウトの生誕祭は、演奏中の予期せぬタイミングでケーキが登場することが恒例となっているが、メンバーが今回その瞬間に選んだのが「卍」。普段から、会場にいる全員が演奏の合間に「ストップ」の掛け声で動きを止める遊び心に溢れた「卍」だが、一瞬の無音の後に続くはずの演奏が始まらない。そこで空気を察した幸樹が「そのストップじゃないやろぉ!」と崩れ落ちる(笑)。
演奏は一時中断しケーキが登場。玲夏が「心の声で歌って下さい」とファンに促しバースデーソングを歌う。照れ隠しなのか玲夏の歌に、自ら「happy Birthday to me」と歌声を重ねた幸樹に盛大な「おめでとう」の拍手がおくられた。そして、これもいつの間にかダウトでは恒例となった、お祝いされた人がケーキを手にしたまま1曲歌うというシステムにのっとり、途中になっていた「卍」が再開。右手にケーキ、左手にマイクを持って歌う幸樹に、「間違っても扇子みたくケーキを振っちゃダメだよ」といった玲夏からの忠告に会場からは笑いがこぼれた。
ライヴ後半は、真っ赤な照明に包まれた「MUSIC NIPPON」。重たいリズムと妖艶なサウンドが、骨太なバンドの真髄を思わせる。続く「鬼願」では幸樹も深く腰を落としお立ち台の上でヘドバン。今はコロナ禍で、定位置での参加になるオーディエンスが、まるで以前のようにステージに向かって逆ダイブをしている様子が目に浮かぶような異様な熱気が会場を包んだ。そして、本編のラストは、夢の続きが見られるようにと明るい光に溢れた「ドラマチックパレード」で締めくくられた。
再びアンコールに応え登場したメンバー。前ドラマーのミナセが脱退した際、最後の曲として“別れは関係性の終わりではない”というメッセージを込めて作られた「有終の美」を披露。ファンへの思いとも重なる《これからもヨロシクの乱れ咲き》というフレーズに特別な思いが溢れる。続けて、攻撃性のある暴れ曲「失神」、前向きに心を解放させてくれる「飛行少女」を届けMCへ。
メンバーから、幸樹へ一言ずつ誕生日のお祝いメッセージがおくられたが、なかでも玲夏からの「これからずっと一生、一緒だって言うと嘘になるじゃない? だからバンドが続く限り全力でやっていきましょう」の言葉に、幸樹は「玲夏が言ったように、きっちりと活動をして、きっちりとバンドを終わらせるから」と続ける。ある意味、誤解を招きかねない発言に「解散っていう話じゃなくて、どんな事にも、いずれ必ず終わりはくる。だからこそ、俺らはそのなかで1分でも1秒でも長くバンドを続けられるように、今を頑張るっていうことだから」と真意を語った。
「遅咲きだったとしても、俺らは未来を掴みにいく。たまに無茶をして暴走しがちなところはあるけど、みんなが背中を押してくれて、メンバーが背中を押してくれたら俺はアクセルフルスロットルでいけるんで。周りに否定されようが、みんながいれば俺はやれる。中野サンプラザ(来年3月4日に開催される15周年ライヴ)まで共に歩んでください!」――幸樹
これまでと同様に、常に先陣を切って進むことを約束した幸樹にオーディエンスからは惜しみない拍手がおくられた。
最後は「俺たちらしく暴れて終わろう!」の掛け声で届けられた、ダウトの始まりの曲「フラッシュバック」。メンバーは、ステージ上を所狭しと左右に移動し、ファンと目を合わせ掛け合いと煽りを繰り返す。激しくステージ上で入れ替わるメンバーの様子を目で追いリズムでリードする直人、勢いのままに床に寝転がる玲夏、演奏の終わりにギターを高く掲げた威吹とひヵる。そして、楽しくて感情の制御が効かないといった様子で地団駄のように足踏みをする笑顔の幸樹。ライヴが生きる場所――そんな真っ直ぐで熱いライヴを見せてくれた。
今年は、高田馬場AREAでの月1回のライヴ『SUPER LIVE THEATRE AREA』の開催ほか、年内に『化學反応-BAKEGAKU REACTION-』と銘打ったアーバンギャルドとのコラボ作品をリリース。来年のツアーや、ベスト盤のリリースもありと、15周年も特別な年になりそうだ。詳細は下記情報欄にてチェック!
セットリスト
1.赤春の林檎
2.感電18号
3.サテライトTV
4.SUNRISE
5.輝夜に満ちて勿忘草
6.生にしがみつく
7.狂喜乱舞
8.富と名声
9.官能ロボット
10.歌舞伎デスコ
11.一世風靡ファクト
12.MUSIC NIPPON
13.鬼願
14.ドラチックパレード
ENCORE
1.有終の美
2.失神
3.飛行少女
4.フラッシュバック